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ラピュタ阿佐ヶ谷 [映画]

先日、昭和の日本映画等が楽しめる名画座「ラピュタ阿佐ヶ谷」に行きました。

こちらは、ぼんぼちぼちぼち様による「ぼんぼち選・優良映画館」ベスト4にも

選ばれており、常々行ってみたいと思っていた映画館です。ここで見逃していた

安部公房原作・勅使河原宏監督の「他人の顔」が上映されていました。

(ぼんぼち様のブログ記事 http://bon-bochi.blog.so-net.ne.jp/2017-07-28

              http://bon-bochi.blog.so-net.ne.jp/2017-02-01

2IMG_0809ラピュタ阿佐ヶ谷.jpg IMG_0809ラピュタ阿佐ヶ谷8.jpg

JR中央線阿佐ヶ谷駅北口から徒歩2分、商店街から少し入った所に現れた

ラピュタビルは、緑に囲まれたプチリゾートのような趣があり、

淡路島の土や鉄道の枕木が使われているその建物には温かみが感じられます。

IMG_0809ラピュタ阿佐ヶ谷5.jpg

木の枝やらせん階段の曲線がいい感じです。

3IMG0809ラピュタ阿佐ヶ谷.jpgIMG_0809ラピュタ阿佐ヶ谷6.jpg

48の座席は開演前に満席になってしまい、階段の座布団席、通路のパイプ椅子が

追加で設けられ、空間を共有する芝居小屋の様なワクワク感を久々に味わいました。

映画についてはぼんぼち様が素晴らしい解説をされているので詳細は省きますが、

アイデンティティの喪失、人間にとって「顔」とは何かを深く考えさせられます。

戦後の傷跡が残る中で上辺だけは新しく塗り替えられていく新宿や渋谷の風景と

事故で爛れた素顔の上に今風で派手な顔立ちのマスクを被せて生きる主人公、

武満徹の音楽や磯崎新の建築も含め様々な実験的な要素を詰め込んだこの作品と、

他人の顔になる事で人の心理がどう変っていくかを試したいという作中の実験

・・というように、テーマが重層的に構成されている所や、

高度成長期の浮かれた世相と、そこから取り残されたような負の部分

(ケロイドの為に入水自殺する女性や精神を病む人々)の対比も印象的でした。

様々な分野の才能が奇跡的に集約されて目眩がするようなこの時代の

エネルギーが感じられる、とても見応えのある作品でした。

1IMG_0809ラピュタ阿佐ヶ谷.jpg

「顔」についての余談ですが女性は一般的に勘が鋭いので

声、話し方や考え方、匂い、肌の触感、雰囲気等

奥さん役の京マチ子や知的障害者役の市原悦子のように

同一性を見破れる人が多いんじゃないかと思います。

※ ※ ※

少し前に読んだマルグリット・ユルスナールの短編「源氏の君の最後の恋」で、

年老いて盲目になった源氏の元にかつての恋人の一人である花散里が

見知らぬ女性のふりをして何度も訪れる話があります。

全て花散里だとわかった上で楽しんでいるようには描かれておらず、

源氏ほどの人でも見破れないのだろうかと思ったものですが

男性は女性の上辺に騙されやすい傾向があるのでしょうか。

それとも積極的に騙されてでも機会があれば受けて立つ、とか( ̄∇ ̄)?

 IMG_0809.jpg

映画鑑賞後、3・4階部分にある「山猫軒」というフレンチレストランに行きました。
テラス席は暑いので室内での食事になりますが、洒落ていて軽井沢のよう。。
メインは撮影する前に食べてしまい画像がありませんが美味しかったです!
 IMG0809ラピュタ阿佐ヶ谷7.jpg
滅多に来られないので、雰囲気の良さそうな「スターロード商店街」も散策。

IMG_0809店2.jpg IMG0809喫茶店4.jpg

(左上:店名失念しました。 右上:「黒猫茶房」。 下:名曲喫茶「ヴィオロン」)

IMG_0809喫茶店3.jpg IMG_0809喫茶店6.jpg

一見さんお断りかもとためらいつつ、思い切ってヴィオロンに入ってみました。

(フラッシュをたかなかったので暗すぎる謎の画像しかありません。。)。

レコードの傷がプツッ!という音を久しぶりに聞きました。

思ったより気楽に過して構わないらしく、お客さんが暗い中で本を読んだり

お店の人は外の植木に水遣りに行っていたり。。

コーヒーに入れるのはミルクかブランデーを選べます。ミルクを頼んだら何やらごってりした

バター味の生クリームみたいなのが出てきて、よくわからないながらそれをコーヒーに入れて

飲んでいたら、それはケーキセットのチーズケーキだったそうな。(*゚∀゚*)オハズカシイ・・

近くに住んでいたら時々立ち寄ってしまいそうなレトロ色全開の不思議なお店です。

名曲喫茶というと、お茶の水の「名曲喫茶ウィーン」以来約30年ぶりでしたが

テルマエ・ロマエで有名な漫画家ヤマザキマリさんが高校生の頃、

その喫茶ウィーンでバイトをしていたという記事を最近見かけて驚きました。

コーヒーゼリーがとても美味しかったその店の舞台裏を初めて知りました。


世界中どこでも生きていけそうな自由な精神、

しなやかなたくましさがあるヤマザキさん、大好きです。

話は戻って、駅前の「ギオンGION」には雨宿りという口実で入りました。

IMG_0809喫茶店1.jpg IMG_0809喫茶店2.jpg

禁煙席はカウンターだけですが、喫煙席のブランコに座りたかった~!

香ばしいサクサクのワッフルは、生クリーム・つぶあん・苺ジャム・バターが付いていて、

自分で好きなようにトッピングできるのが嬉しくて組み合わせを楽しみました。

外に出ると小雨が豪雨になっており、全く雨宿りの意味はありませんでした。[もうやだ~(悲しい顔)]

IMG_0809店.jpg

これは撮影しただけの「かきっこ商店」という広島牡蠣専門店ですが、

看板に書かれた台詞に思わず唸りました。

「酒を飲むのは金の無駄 酒を飲まぬは人生の無駄」。。[ビール]

アルコールが飲めないのがつくづく悔やまれます。

※ ※ ※

良いものをいろいろと紹介して頂いた上に、快くリンクを許可して下さった

ぼんぼちぼちぼち様、本当にありがとうございました[exclamation×2]

・・こんな底の浅い記事で申し訳ないです(>_<)

nice!(49)  コメント(20) 

nice! 49

コメント 20

うめむす

TOKYOの文化漂うところですなぁ!
こういった場所、行けば必ず感激する癖に、なかなか行く気になれない私。
結局一番腹に落ちる
「酒を飲むのは金の無駄 酒を飲まぬは人生の無駄」
という言葉を反芻しながら、今日も酒を飲むであろう私。

by うめむす (2017-08-15 09:29) 

トロル

このとても可愛らしい外観の映画館に、ユーリ・ノルシュテインの映画を観に行きました。安部公房/勅使河原宏の「他人の顔」は、文芸坐ル・ピリエか、中野か…忘れてしまってさみしいです。貪るようにいろいろ観ていました。
うっかりくまさんの取り上げた男女の感覚の相違って、昔は性別によって仕分けは雑なんじゃ?と強く感じて抵抗が大きかったけど、大分大人になって思うのは…まぁ、確かに。一般に男性ならではの「男は上手に騙して欲しい、」って意見など、あまり理解できないので盲目になった源氏と花散里のエピソードにもあたるのかも。「女は絶対に騙されたくない、」というのは、男=ロマンチスト、女=リアリストというよりも、リスクに対処するに、力技で乗り越える体力への危惧から…慎重にならざるを得ない話じゃないかな、と思うんです。あ、やはり、現実的に夢を維持しようとしてる?かな、、、笑
by トロル (2017-08-15 10:52) 

lequiche

ラピュタ阿佐ヶ谷、とてもいい雰囲気ですね。
ザムザというシアターもあるみたいで、
スウィフトとかカフカとか、
ネーミングまでマニアックです。

《他人の顔》という映画は観ていません。
安部公房は他者との関係性についての齟齬とか軋轢とか
そういうストーリーを書く傾向がありますが、
仮面についても、
仮面が仮面なのか、それとも素顔が仮面なのか、
それとも仮面こそが素顔なのか、
という錯綜した感覚が語られることがあって、
それは一種の比喩なのですが、
仮面というかたちの暴力性が表出されていて慄然としました。

ヴィオロンという名前の語感も
ヴェルレーヌみたいでよいですね。

サケビー君の出現の由来もよくわかります。
シリアスなものほどそれをギャグにするのは落差があって
面白いし、癒やしにもなるはずです。
吾妻ひでおにもカフカのパロディがあったような気がします。
by lequiche (2017-08-15 19:22) 

ぼんぼちぼちぼち

「他人の顔」素晴らしい出来の作品でやすよね!
もぅあの理論あのエネルギーあの感性には圧倒されっぱなしでやすよね。
安部公房×勅使河原宏コンビは最強でやすよね。
「砂の女」「おとし穴」も見事でやすよね。

ヴィオロンとギオンにも寄られたのでやすね。
喫茶店もナイスなチョイスされやしたね(◎o◎)b 
by ぼんぼちぼちぼち (2017-08-15 22:35) 

水郷楽人

良いところですね。近くの名古屋にもこんな所があると良いです。
by 水郷楽人 (2017-08-16 07:46) 

うっかりくま

うめむす様
非文化的な生活を送っている自分が、こういう所へ
行くのは「非日常」であります(^^;)。
午後には日活や新東宝ピンク映画の上映もあり
往年の正統派美人女優のブロマイドも揃っている為か
8割方が男性でご年配の方も多く見受けられました。
あの近さで見たら鼻血が出そうです。。(^Д^)

by うっかりくま (2017-08-16 15:59) 

うっかりくま

トロル様
「他人の顔」、女性でも受付の人は見抜けな
かった事になっていますが、立場上怪しい人
は通せないというのは正しい判断ですよね。
性別というより置かれた立場や利害関係、
関わりの深さによって変るのかもしれません。
ユーリ・ノルシュテインも良かったですね!
トロルさんもいろいろ面白い物をご覧になって
いますね~。私も時々異次元へトリップしない
と身が持ちません。花散里の話が載っている
東方綺譚はlequiche様のユルスナールに関する
記事に触発されて読んだものなので、多分トロル
さんもお好きなのではないでしょうか。お薦めです!


by うっかりくま (2017-08-16 16:23) 

うっかりくま

lequiche様
ザムザってまさかあのグレゴール・ザムザ?
と思ったらそうだったという。。(*゚ロ゚)
ラピュタも宮崎アニメでなくスウィフトまで
遡ってしまう所はさすがlequiche様ですね!
中学生の頃「R62号の発明」で嵌まった安部公房は
1冊も捨てていないはずなので、本棚の森の奥深く
を探索したら読み直したいと思います。って、いつ?
サケビー君に関する温かい御言葉、恐縮です<(_ _)>。
マッドアマノや会田誠等パロディ好きなのです。
吾妻ひでおのパロディとはまた、面白そうですね。
by うっかりくま (2017-08-16 16:46) 

うっかりくま

ぼんぼち様
ラピュタと「他人の顔」、お陰様でとても楽しい
夢のようなひとときを過させて頂きました。
ご紹介いただいて、ありがとうございました。
映画を見終わってからぼんぼち様の御記事を
改めて読み直して、ほんとにそうだなあと
何度も頷きました。中核の部分はそれ以上書く
能力もないので周辺の話ばかりでさぞがっかり
されたのではないかと反省しきりです(o_ _)
阿佐ヶ谷のお店、niceな選択だったでしょうか。
他にもいろいろあって、近かったら順番に通いたい
位です。西荻窪周辺でアンティークジュエリーの
お店巡りをしたこともあったのですが、田舎暮らし
の現在はすっかりご無沙汰してしまっています。

by うっかりくま (2017-08-16 17:04) 

うっかりくま

水郷楽人 様
ご訪問とコメントをありがとうございます!
名古屋も文化発祥の地のイメージが私には
あるのですが。。阿佐ヶ谷はかつて文士村と
して文士達に愛された、とラピュタビルの
しおりに書かれていました。そういう所は
住人の意識も違うようで、憧れがあります。



by うっかりくま (2017-08-16 17:10) 

majyo

ミニシアター系の映画は好きです。
そして阿佐ヶ谷のラピュタはまったく存じませんでした。
可愛い感じですね。先日90席くらいのシアターへ行きましたが
その半分と言う事は、みんなお仲間みたいですね
機会があれば行ってみたいです
by majyo (2017-08-16 23:22) 

うっかりくま

majyo様
ご訪問とコメントありがとうございます。
ここで顔見知りになった人同士が歓談するスペースも
あったり、映画好きには居心地が良い場所のようです。
majyo様もお身体、お大事になさってくださいね。


by うっかりくま (2017-08-17 23:40) 

little_me

素敵な映画館。
いつか行けたらいいなぁ♪
チーズケーキをコーヒーに入れちゃったくだりは
吹き出しましたw
でもちょっと「デザートのチーズケーキです」とかの
説明欲しいですよね(^^;
by little_me (2017-08-17 23:52) 

saia

素敵、素敵!(((( *´艸`))))
ラピュタというと「天空の城ラピュタ」を思い出してしまう野暮な私でも、映画館、映画作品の内容、喫茶店、、、独特の雰囲気にうっとりしてしまいます♪♪
(ワンオクの記事を読んでいただき感謝感激です! ありがとうございました♡ うっかりくまさん、ガンズ&ローゼズに熱中していたとはー!! アクセルとワンオクって親交があるんですよ♪)

by saia (2017-08-18 15:35) 

うっかりくま

little_me 様
ご興味がおありでしたら、是非!日活とかではなく
海外のアニメーション特集の日などに。。(^^)
レアチーズケーキはバターの味がしたので、もしや
これがはやりのバターコーヒーか?と勝手に勘違い。
ウインナーコーヒーみたいにして飲んだら美味しかった
し、レコードを聞いている人の邪魔にならないように
会話は極力避けていたため、しばらくしてから「ケーキ
まだですか?」と聞いて事実が判明しました( ̄∇ ̄)。
ちょっとだけブランデー入りも試してみたいです。
by うっかりくま (2017-08-18 19:49) 

うっかりくま

saia様
最初はアニメーション専用の映画館だったので、
「天空の城ラピュタ」が語源で正解みたいですよ。
中央線沿線はこういう環境が魅力の1つなんでしょうね。
リアルタイムでコンサートに行ったり海賊版ビデオ
(まだDVDじゃなく!)を買い求めたのはガンズが
最後でしたが、スーパーのBGMに使われているのを
聞いたときには脱力しました。。(><)
親交があるとは、益々興味が湧いてきました(^^V)

by うっかりくま (2017-08-18 20:04) 

hatumi30331

素敵な映画館ですね。
階段の構図、撮りたくなります。^^
そちらはスゴいお天気だったようですが・・・
雷や雹・・・
大丈夫でしたか?

by hatumi30331 (2017-08-20 00:00) 

響

緑に包まれて
本当にラピュタのイメージですね。
by (2017-08-20 08:34) 

うっかりくま

hatumi30331様
ありがとうございます。そうなんです、撮りたく
なる所がいっぱいで楽しかったです。(^^)
hatumi様の空の画像も、ずっと見ていたいような
素晴らしい光景ですね。広い空、好きです!
地元の花火大会は中止されたようですが、今日の
お祭りは雨上がりで涼しくて良いかもしれません。




by うっかりくま (2017-08-20 11:52) 

うっかりくま

響様
実は宮崎アニメはあまり得意でなく、恥ずかしながら
「天空の城ラピュタ」も見ていないのですが、画像を見る
と確かに建物と植栽はそれを再現しているようですね。
TVでオンエアされたら今度こそ見てみようと思います(^^;)
by うっかりくま (2017-08-20 12:04) 

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