おおかみこどもとマイノリティ [映画]
細田守監督・原作という映画「おおかみこどもの雨と雪」を借りて見ました。
おおかみ男と恋に落ち、子供ができた花が地方の移住先のご近所さんに助け
られながら子供を育て、自立を見守っていくファンダジーであります。
非現実的というご意見もあり、邪道だとは思いますが、障害のある子どもや
社会的マイノリティの子育てとして深読みするとかなり共感できました。
自分には重度の知的障害を伴う自閉症の子供がいます。
もう成人しましたが、言葉は話せずジェスチャーで意思を伝えます。
幼児期は多動で本棚に登って棚ごと倒す、うたた寝したすきにブルーレットを
部屋中にまき散らす、夜も眠らず泣き続ける、追いかけてへとへとになる毎日は
まさに雨と雪状態。比較的おおらかだった地方のK市では近所の方も気軽に手を
貸してくれたり遊んでくれたりして楽しかったのですが、お受験する子が多い
都内の社宅に移ってからは、周囲に気を遣って謝り続ける毎日でした。
都会の人が冷たいというより、人が密集しているから大きな音や声が迷惑になり、
自分の縄張りに他人が侵入しがちなのでストレスを感じ易く、常に否応なく
入ってくる刺激で神経が過敏になってしまうのかもしれません。伸び伸び振る舞うと
傍若無人という事になってしまうので、便利だけど子育てはし辛いと感じていました。
自閉症は見た目は普通なだけに、奇声を発したりこだわりが頻発すると奇異な目で
見られたり躾云々で怒られることも多いのですが、本人にとっては嬉しさの表現
だったり、その場に居辛いというSOSのサインだったりします。
わかってもらえない、自己責任と批判されると思うと助けを求めることもできず、
一人で本(今ならネット)で調べる所も、なるべく普通に、目立たぬようにと
言い聞かせるけれど、子供にはそれができずにハラハラする所も一緒でした。。
子供の場合は幸い診断が早く1歳から療育施設に親子で通えたので、想いを分かち
合える仲間ができ家族も協力してくれたので何とかやってこられたのですが。。
花にも狼ハーフのママ友や理解のある家族がいたらどんなに心強かったでしょうか。
普通ではないからと言って親の愛情が変わるわけではなく、むしろ手がかかる
からこその可愛いさもあり、癒されたり幸せを感じることも多々ありました。
母子でいる時間が長く閉鎖的で密だった頃は毎日を遣り過すだけで精一杯だった
のに、今では懐かしく思うこともあります。(まだ一緒に暮らしていますが。)
障害があっても自分にはない良さ・・何があっても慌てない、観察が鋭く手先が
器用で手間を惜しまず何事も再現するのが上手い、余計なことを言わず(^^;)
笑顔で人を和ませることができる・・等いろいろあります。
映画では秘密を隠して怯えながら生きていくのではなく、他の人と違うことを知っても
そのまま受け入れてくれる友(彼?)と出会う雪、尊敬できる師と出会い、自分にしか
できない困難な道を歩むことを選んだ雨。親としては苦労が少なそうな安全な道を押し付け
がちですが、二人が他者との出会いの中で自分の道を選び取り、それぞれの社会の中で
生きていくためのルールや振る舞い方を学んでいき、徐々に親離れしていく過程は
見ていて切なくもあり、感動的でもありました。
家族以外の人と関ることで自分自身を知り、多くの事を学び、その存在を知ってもらう
ということは障害の有無、軽重に関わらず生きていく上で大事な事だと思います。
最近怖ろしい事件も多く、いろいろな意味でマイノリティが生き辛さを感じる世の中に
なりつつあるようで危惧しています。明るい未来を思い描くのはとても難しい事ですが、
せめて他者との違いに寛容な社会であってほしいと願わずにはいられません。。
考えてみれば花に限らず、恋愛も結婚も子育ても、人生は異文化と出会い、憧れ、
反発したり動揺しながら受け入れていく事の連続なのではないでしょうか。
散歩中に見かけた蜜柑と柿の実、どちらも良いと思いたい。。
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いろんな思いをしてきたんですね。心を動かされました。
by せっちゃん (2016-10-31 17:18)
ブログテーマからはずれているのでどうかと思ったのですが、結局UPしてしまいました・・お忙しいのに読んで下さってありがとうございます!
by うっかりくま (2016-10-31 21:19)
他の人の苦しみや悲しみを、わからないまでも、理解しようとすることの大切さを思いました。寛容な人間でありたいといつも思っています。
by りょうこさん (2016-11-01 14:16)
りょうこさん、ご訪問ありがとうございます!
そうですね。そういう姿勢は忘れたくないですね。
自分自身は異文化と衝突して自爆の連続ですが・・(笑)
by うっかりくま (2016-11-01 22:48)