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国民的人気画家、それぞれの描く意味 [アート]

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東山魁夷の10年ぶりの大回顧展が12/3迄国立新美術館で開かれています。
学生時代の私にとって宝物だった画集「ドイツ・オーストリア編」の中で
特に好きだった「晩鐘」も、久しぶりに鑑賞することができました。
東山魁夷の作品は美しいのはもちろん、向き合うと心が落ち着きます。

名声を得てもなお、自分は才能がないと思っていたという東山魁夷は、
唐招提寺の障壁画を完成させた事で描き続ける意味・「自分にとって
描くことは祈ること」、どれだけ心を籠めたかが大事なのだと悟ったの
だそうです。その後に描いた上記画像の「緑響く」「静唱」「行く秋」
等の、心の中で暖められた風景や思いを丁寧に掬い上げ、解き放ったか
のような作品には、心を打たれて思わず涙ぐんでしまいました。。
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国立新美術館で東山魁夷展と同時に開催されていたボナール展。12/17迄

ボナール1.jpgボナール2.jpg

ピエール・ボナールは、近年母国フランスで人気が再燃しているのだそうです。
年々変わっていく独特の色遣い、浮世絵に影響を受けた構成や、背景から書割の
ように重ねていく手法、1日の大半を浴室で過ごしたという妻、飼っていた動物
達を描いた作品など、130点を超える作品をゆっくり見て回る事が出来ました。
個人的には南仏の明るい風景、「花咲くアーモンドの木」が気に入りました。
それから・・右上の『白い猫』の絵にちなんでボナール展のHPで募集している
「びよーん猫」のコーナーに、ソネブロガーちぃ様の愛猫・梅吉さんのお写真
も掲載されています!(こちらです→ http://bonnard2018.exhn.jp/cat/
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リッラ・ヒュットネース.jpgラーションイケア2.jpg
スウェーデンの国民的人気画家、カール・ラーション。油絵、版画、挿絵、
妻カーリンと共に作り上げた理想の家「リッラ・ヒュットネース」での家族
の暮らしを描いた水彩画、そしてカーリンが手作りしたタペストリーや衣類、
塗り替えたりデザインした家具など、夫妻の生い立ちから何故そのような
暮らしを目指したかが判るような展示構成になっていました。
画家としての才能もありながら、子沢山の家庭を切り盛りし、伝統工芸も
学んで生活に潤いと美しさをもたらした愛情深いカーリンが素敵すぎます。。
上画像左は本物の家の写真、右はそれをイメージしてIKEAが提供したもの。
東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館、12月24日迄。
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東京都美術館にて1/20まで開催中の「ムンク展~共鳴する魂の叫び」。
ムンクもノルウェーを代表する、国民的人気画家となっています。
ちなみにカール・ラーションは1853年、ムンクは1863年、ボナールは
1867年生まれとほぼ同時代を生き、3人ともパリ万博でジャポニズムに
遭遇しています。ムンクとボナールはスウェーデンの作家、アウグスト・
ストリンドベリと関わりもあったのですね。
幼少時に母や姉を亡くし病弱だったムンクは、若く美しい女性でさえ
狂気や死と隣合わせの、自分の個を喪失させる存在(「吸血鬼」等)
として描いており、マリアの受胎の瞬間を描いたとされる「マドンナ」
も性、生、死が絡まりながら密接に結びつき、モノクロで描かれた女性
は胎児と精子に縁取られた死体のようにも見えます。
ムンクにとっての絵は「自己告白」。描くことにより、繊細な神経には
耐えがたい内面の恐怖や不安を対象化し形にすることで正気を保ち、
繰り返し描くことでその体験を何度も見つめ直して昇華していったよう
に思えます。「叫び」などに見られる泥人形のような人物はもちろん、
美しい風景を描いた「星月夜」「太陽」にも、ムンクの精神状態や自我
が色濃く投影されているのを感じます。そして、独身を通したムンクは
作品を手放す時には同じものを2枚描いて1枚は手元に置き、自らの作品
を「子供達」と呼ぶほど愛着を持っていたのだそうです。。
    ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※  ※
4人の国民的画家の作品を鑑賞し、本人が描かずにはいられないものは
何なのか、そしてそれを追求し続けることの重要性等、画家の性(サガ)
や業の様なものを改めて強く感じました。
それはともかく、自分自身が展覧会のハシゴをする気力・体力が衰えて
きたこともひしひしと感じる秋の午後でした。[もうやだ~(悲しい顔)]長くてスミマセン。。

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